「春月夜」

 





 

―――月が眩しい。

ふと瞼の中に突き刺さってくるような光に気づき、目を開けると丸い月が輝き出していた。

「ん…生暖かいな…。」

つい最近までは夜は寒くて、こんな風に外で寝ていたら凍え死んじゃってもおかしくないような気温だった。けれどもそろそろ春が来るのか風が生暖かい。

起きあがると、寝転がっていた時に背中についていたであろう草をはらい、枕代わりにしていたぺしゃんこの帽子をパンパンとたたいて、頭に被せる。

「あら、魔理沙じゃない。何してるの?」

背後で聞き慣れたあいつの声が聞こえた。

「ん、いや。草が気持ちよかったから寝てた。そっちこそどうしたんだ?お前が外に出るなんて珍しいじゃないか。」

「どうせ、温室魔法使いですよ。いいじゃない、月が綺麗だったから外を歩きたかっただけよ。」

「……なんというか、春は変な奴がよく出るって聞くけど、お前も…いや何でもない。」

アリスの表情が明らかに殺意を持っていたから、これ以上続けると結果が見えているので、アリスを犯罪者にもしたくないし、私が被害者にもなりたくない。

「隣、座っていい?ずっと顔を上げっぱなしだと首が疲れるでしょ。」

「あぁいいぜ。」

スカートの裾を直しながら、アリスは私の隣に腰掛ける。

「……」

「……」

沈黙が続く。

「…ねぇ。」

「…なんだ?」

「桜そろそろ咲くかな。」

「あーそうだろうな。暖かくなってきているってことは確実に春が来てることだし。」

ふと、あの妖怪桜を思い出す。……あんな桜は見たくない。

「で、それがどうした?毎年のように桜は咲いてるんだしさ。」

何故だかアリスに冷たい目線を送られた。自分が何かしたんだろうか?

「……別に。」

ちょっと不機嫌な声で返事を返してくる。深い詮索をするのはやめておいた。

私は立ち上がる。風に帽子が吹き飛ばされないように片手で抑えながら、アリスにもう片方の手を差し伸べる。

「よ…っと。」

…もしアリスが「どっこいしょ」なんて言ったらふいてたかもしれん。

「何か失礼な事でも思ってたでしょ?」

読心術でも持っているのかとどこか疑ってしまう。

「いいや。それより―――」

握ったままの手を引っ張り歩き出す。

「きゃっ。ちょ、ちょっと…」

「こんな夜は歩きながら月を楽しんだほうがよっぽどいいぜ?」

握った手に確かな感触を感じると、歩調を早める。風が頬をかすめる。

こんな生暖かい風よりも、春の暖かい風が来て欲しいと思った。

 

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