「First Kiss」

 

 

彼女の顔が徐々に近づいてくる。いや、自分も近づけているんだから、実際には近づくといった方が良いのだろうか。

さっきまで1m以上の距離でしか彼女とは接したことはなかったのに、40センチ、30センチ、―――それ以降は頭が混乱して距離なんてわからない。

ただ顔が近づくにつれて胸の内側からドクンドクンと鈍い音を立てて心臓が全身を打ちつけているようだった。動かない体をよそに彼女の顔は近づいてくる。時間が長く感じて、自分は何をやっていうんだろう、犯罪でもしてるんじゃないか、何か一線を越そうとしていることにとてつもなく抵抗感が頭を掠めた。―――正常な思考が働く今では当時の自分が恥ずかしいのだが。

「ちゅっ…んっ」

自分の唇と彼女の唇が触れた瞬間というのは時が止まるという表現がピッタリなほど全ての感覚が麻痺していた。頭も目の前真っ白で、今この瞬間何が起こっているかも把握できない。ただ唇の感覚だけは麻痺はしていなかった。

「んはぁ…」

どれぐらい経ったかは自分も全く分からなかったけど、どちらからともなく離れた。恥ずかしいという気持ちからか、どうしても彼女の顔が見れない。

ただチラリと覗いてみると、彼女の顔もすごく赤く火照っていて、自分もそういった感じなのだろうと思った。

そう思ってるなか、彼女はモジモジとして

「…初めてなんだから。」

上目遣いにボソッと言う彼女の顔はとても可愛く愛おしく見えた。そして言うや否や、ぷいっとそっぽを向く姿に思わず自分は後ろから抱きしめた。自分でどうしてその時そんなことをしたのかわからない。

ただあの時、彼女の可愛さにキスをする前までガチガチに固まっていた心が動かされた結果ああいった行動に移していたんだと思う。

「ちょ、ちょっと…」

いきなりの事に彼女は困惑していたが、自分はそれにお構いなく彼女の耳元に顔を近づけて

「俺だって初めてだって。」

そう言って抱きしめる力を強めた。髪から伝わってくる匂い、体の小ささ―――女の子って華奢なんだなと抱きしめて思った。

「…今度はお互い緊張しないでキス、しようね。」

抱きしめた腕においた彼女の手の温もりがさらに温かく感じた。

-fin-

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